昨年11月に、久しぶりで個展を開催しました。
私の展示会のお客さんは、95%が女性です。
男性は、直接の知り合いか、女性に連れてこられた人がほとんどですが、
たまにギャラリー巡りの方がいらっしゃることもあります。
ギャラリー巡りの方は、大抵ひとまわりサラッと観て
会釈して退室されるので、こちらもあえて話をすることもありません。
「ありがとうございました」とお礼を述べる程度です。
前回の個展にいらしたその方も、そんなギャラリー巡りの方と
思っていました。
仮にAさんと呼ばせてもらいます。
男性一人だし、知り合いではなかったので
「こんにちは」と挨拶したあと、他の方とお話していたのですが
Aさんは一通り観終わった後も、なんとなく留まっていらっしゃいました。
あれ?という感じで、改めて「こんにちは」と挨拶すると
突然「ちょっと前まで盛岡に住んでいたんだ」と・・・
思わず「えぇ?」と声が出ました。
震災の時はもう住んでいなかったけれど知り合いがたくさん流された、と。
展示会では、岩手県、宮城県、福島県の「県の花」をモチーフにした
バッグを展示していました。
それを作った思いを貼っていたのですが、
それを読んでお話してくださったようでした。
実は、展示会でそういう反応をしてくださったのはAさんだけでした。
それで「私は阪神の時に、大阪にいたのです」と返事をしました。
その言葉には、ただうなずいていらしただけですが
お互いに何か伝わりあうものを感じたのは確かです。
その後しばらく、岩手県の「桐の花」バッグを黙って見ていらして、
また急に「俺は東北新幹線を作っているんだ」と。
実はわりと鉄分が濃ゆくて、鉄子と自称するほどではないですが、乗り鉄ぽい(笑)
で、思わず食いついてしまいました。
気を良くしてくださったのか、
東京からずっと東北新幹線を作りながら、北上してきて
青森延伸までは盛岡に住んでいて、
今は函館延伸のために北海道に引越したのだということを
お話してくださいました。
調子に乗って、札幌まで来ますか?と聞いたら
「俺の実感だと、後20年だね」と答えてくださった2〜3日後に、
新聞にトップ記事で「札幌延伸、20年後に開業」と出たのですよ。
記事を読んだ時は、Aさん何者?と思ったけれど
展示会は一期一会と思っているので、芳名帳も置いていません。
今年の春か、来年の春か、福島三春のさくらを観にいくと
映画『アブラクサスの祭』を観てから決めているのですが、
これはなんとしても青森から東北新幹線に乗って行かなくては。
そして20年後には、札幌〜東京間を乗ります。
モノを作る時には、何か思いを込めたいこともありますが、
それは作る側の事情で、観る方には関係ないと私は思っています。
それでも、この時の展示会は、Aさんに観てもらえたことだけで
やって良かったと思えたのでした。
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しばらく休んでいたブログですが、また少しずつ書こうかなと思っています。
studio未来の活動については、スタみら*What's Newに書きます。
こちらは、私個人のあれこれを書いていくつもりです。